パリ・モンパルナス墓地のブランクーシ彫刻、「所有者」代表とパリ市が綱引き

パリのモンパルナス墓地にあるブランクーシ作の墓碑「接吻」を巡る係争が新たな段階を迎えている。作品の撤去に着手しようとした画商に対して、パリ市が去る12月に、上訴中であることを理由に墓碑へのアクセスを拒否した。
この墓碑は、1910年に亡くなったロシア系女性のターニャ・ラシェフスカヤさんのもので、ブランクーシ作の彫像が墓碑の上部に設置されている。「接吻」と題されたこの彫像は、ブランクーシが1907年から1945年にかけて数体を製作したもののうちの一つで、縦長の直方体を二つ並べたような形で、全体が抱き合っている2人の人物のように見える。ブランクーシの作品の価値が上昇するに伴い、この彫刻の所有権をめぐる争いが発生。パリの画商であるギヨーム・デュアメル氏は、ウクライナにラシェフスカヤさんの親戚を探し当てて、その代表者として輸出許可を2006年に申請。政府はこれに対して、輸出を禁止した上で、作品を歴史的建造物に指定したが、デュアメル氏側はこれを不服として行政訴訟を起こしていた。パリ高等行政裁は去る12月11日、手続き上の問題を理由に国による指定を取り消す判決を下し、デュアメル氏は撤去に着手しようとしたが、パリ市がこれに待ったをかけた。
デュアメル氏側は、作品の保全を図り、盗難を防止するために撤去は必要な措置だと主張しているが、利益(例えばブランクーシのブロンズ彫刻は2018年に7100万ドルで落札されている)が絡んでいることは否定すべくもない。経年劣化が進んだ本物の彫刻を保全するため、レプリカに置き換えることは確かに必要だが、本物は美術館に展示されるべき性質のものだとする識者の声もある。