2月12日、原子力発電を支持する団体「PNC(原子力資産と気候)フランス」のアピールに政界や財界の有力者50人ほどが署名した。フランスには伝統的に原子力を支持する超党派の勢力があり、今回の署名運動も保革の垣根を超えた支持を動員することに成功した。
右派・保守派ではアコワイエ元下院議長、ロンゲ上院議員やオベール下院議員(いずれも共和党)、左派・革新派ではシャセーニュ下院議員、ジュメル下院議員(いずれも共産党)、アビブ下院議員(社会党)、モントブール元経済相 、シュベヌマン元内相、ベドリーヌ元外相(いずれも社会党政権で閣僚を歴任)など、また財界人では仏国鉄SNCFの総裁やエアバス会長などの重職を歴任したガロワ氏、有識者ではノーベル化学賞受賞者(1987年)のレーン氏などが署名した。
アコワイエ元下院議長によると、この署名運動の参加者に共通するのは温室効果ガスを削減するためには原子力発電が必要だとの確信であり、原子力発電所が所在する地域の政治家などを動員することが運動の目的という。
このアピールは、フェッセンアイム原子力発電所(オーラン県)の閉鎖(2020年)に抗議し、また政府のエネルギー政策を批判している。現政権は、オランド前政権の決定を受け継ぐ形で、2035年までに12基の原子炉を閉鎖し、電源構成に占める原子力発電の割合を50%にまで引き下げ、再生可能エネルギーの割合を50%にまで引き上げることを計画しているが、アコワイエ氏は、まともな構想とはいえず、原子力発電部門を危機に陥れるものだと手厳しく批判。
政府はまた、フラマンビル原子力発電所で建設中のEPR(欧州加圧水型炉)の完成を待ったうえで、原子炉の新設に関する決定を下す方針だが、アコワイエ氏は「政府の態度は原子力発電部門には将来性はないと示唆するようなものだ」と反発している。フラマンビルのEPRは当初の計画では2012年に稼働を開始するはずだったが、現状では2023年以降に完成が見込まれる。
原子力発電所を運転するEDFをはじめとしてフランスの原子力産業部門は、一部の原子炉の運転期間の延長に対する許可を取り付けることと、原子炉の新設に早期に着手することを目指して、当局に働きかけている。ただし、ポンピリ環境エネルギー相は原子力に批判的な環境派出身なだけに、こうしたロビー活動が効果を発揮するかどうかは不確かだとみられている。