オランダで新型コロナウイルス対策の夜間外出禁止に対する抗議運動が過激化し、暴動にエスカレートした。 オランダ人は通常はクールな印象があるだけに、この事件は意外感を招いている。パンデミック対策で自由を束縛されることに反発する人はどこの国でも一定数はいるし、おそらく様々な種類の不満や憤懣や絶望感が背後にある暴動を、純粋に自由を求める政治的・思想的な運動と受け止めるのは的外れだろうが、自由とは何かについて考え直す好機を提供してくれる事件であったことも確かだ。
これが感染症と関係のない自由要求運動なら、各自が覚悟の上で自分を危険に晒すことにとりあえず反対する理由はないのだが、COVID-19の場合、制限措置を守らずに感染した者は常に、感染の拡大を助長し、(不自由でもいいから感染したくないと考える)他者をも知らぬうちにウイルスを感染させるリスクをおかすことになる。自由よりも安全を優先している他者や、リスクを望んでいない他者(そうした選択も自由の一部だ)にリスクを押し付け、最悪の場合には健康を破壊し、死に追いやる結果になる。そのような危険な自由が権利として自分には備わっていると考えるような横暴な人々と、共存することは非常に難しい。こうした自由の信奉者は自分が他者にとってどれほど危険な存在であり、他者の自由や権利を平気で侵害しているかに無自覚だ。そのため、自由を強く要求する人々こそ、身勝手な活動によって他人に危害を加えないように、厳しく拘束しておく必要がある、という逆説も生じる。残念ながら、パンデミックの支配下ではお花畑風の「自由」という概念はその有効性を失ったと言わざるをえない。パンデミックがもし恒久的に続くなら、そのような自由も永遠に失われたと覚悟すべきだろう。(自由よ、とりあえずさようなら。また会う日まで?)