アトランティック造船所のフィンカンティエリによる買収計画、廃案に

仏アトランティック造船所(サンナゼール造船所)を伊同業フィンカンティエリが買収する計画が最終的に放棄された。27日に仏ルメール経済相、伊パトゥアネッリ経済発展相、欧州委員会のベステアー委員(競争担当)が電話会談を行い、断念を決めた。
アトランティック造船所は、親会社だった韓国STXの倒産(2016年)を経て、仏政府がひとまず84.3%の株式を確保し(別に国営ナバル・グループも11.7%株式を保有)、売却先を探した。2017年4月にフィンカンティエリへの売却で基本合意が成立したが、重要企業の売却とあってその後に計画が修正され、結局、フィンカンティエリが50%株式を取得し、仏政府から1%株式を貸与して経営権を握るが、仏政府は貸与に係り一連の拒否権を確保するという形で落ち着いていた。合意期限は2020年末までだったが、足元の新型コロナウイルス危機で造船業を取り巻く状況も変わり、フィンカンティエリは結局、買収許可の取得に当たり欧州委から求められた条件の受け入れを拒否。合意期限を1月末まで延長して協議を続けたがまとまらず、最終的に断念に至った。
フランス側でも、この買収計画に対する懸念の声が高まっており、仏伊双方とも計画に消極的となり、最終的に断念へ至った。フランス側では特に、フィンカンティエリが中国提携先のCSCCと中国国内でのクルーズ船建造を進めていることを警戒し、クルーズ船建造技術が中国に流出する恐れがあると懸念していた。
アトランティック造船所の事業は足元では好調であり、クルーズ船10隻を向こう5年間に引き渡す予定で、シャルルドゴールの後継空母の建造受注も決まって、手持ち工事量は潤沢な水準が確保されている。2022年時点で純益5000万ユーロ、売上高20億ユーロを目指しており、資本増強を急ぐ必要性が薄れたことも、今回の計画断念の背景にある。ただ、新型コロナウイルス危機がさらに長引けば、クルーズ船発注のキャンセルが出る恐れもあり、そうなると財務基盤の悪化は避けられない。報道によると、造船業とは縁がないフランスの投資家がアトランティック造船所に出資を持ちかけているというが、仏政府は、打診はあるが具体的な交渉は開始されていないと説明している。