2021年1月26日 編集後記

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英国が欧州連合(EU)から離脱した途端に、英国の漁業部門が危機的な状況に陥っているという。魚や甲殻類や貝類をいくら獲っても、以前のように新鮮な状態で大陸欧州に出荷することができなくなった。通関手続きが復活し、書類手続きの面では特に衛生証明書の作成・提出がたいへんな負担になっている。作成を担当する獣医師も不足しており、獣医師に関わる人件費も増大している。衛生証明書なしに通関を突破しようとして、大量の水産物を押収・破棄された業者の例も報告されている。離脱前には翌日には大陸の市場で販売されていた魚が、今では2-3日後でないと市場に届かないから、価格も下落してしまうし、捌けない製品を貯蔵する設備も必要になる。やむなく漁に出る回数を減らすなどの対応を強いられている漁民も多いという。
EUから離脱することで、英国は自国水域での漁業権を完全に回復し、漁獲をEU諸国の漁船と分かち合う必要がなるなる、という宣伝に誘われて、漁民の多くは離脱を熱心に支持した。しかし、英国人の水産物消費は比較的少なく、消費者の大半は大陸側にいる。離脱してしまうと、いくら漁獲量が増えても、客に販売することは難しくなるよ、という警告は 識者やメディアから繰り返し発されていたし、漁民だってそういう指摘を知らなかったわけではないだろう。しかし、いくら警告を受けても、自分に不都合な情報はスルーしてしまい、実際に危機に直面しない限り、危機が来ることを信じれないのも人間の常だ。
主権回復に固執する離脱派の保守党国会議員は「完全に英国籍になれば、魚だってハッピーだ」と主張していたそうだが、漁を自粛せざるを得なくなった漁民からは「獲られないんだから、そりゃあ魚もハッピーだろう」との皮肉な声が聞かれる。少なくとも動物愛護の観点からは離脱は喜ばしい決定だと言えよう。