ワクチン・パスポートの導入構想が浮上、欧州連合(EU)内で賛否両論

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新型コロナウイルスワクチンの接種が本格化する中で、接種者に対して移動制限の緩和を認めるべきだとする議論が浮上している。21日にリモート方式で開かれる欧州理事会でも協議される見通し。
この議論は、ギリシャ政府が12日付で欧州委員会に書簡を送付して提起した。ギリシャ政府は、観光業が国民経済の重要な柱である同国において、夏季シーズンまでに混乱を解消することが死活問題になるとし、ワクチン接種者にEU共通の証明書(ワクチン・パスポート)を発行し、証明書を持つ者に対して自由な移動を認めることを提案した。この提案には、スペイン、マルタ、ポルトガルなど、ギリシャと共通の問題を抱えている諸国が賛同しており、それに加えて、既に国内でこの種の証明書の発行を開始しているデンマークやポーランドなどの諸国も賛成している。逆に、市民の権利を擁護するという観点からこれに反対する国も多く、フランスのボーヌ欧州閣外相は17日の時点で、明確に反対する姿勢を示している。
欧州委員会はこの問題で、EU各国が相互認証するワクチン接種の証明書の仕様について、今月中に策定することを目指し、加盟各国に協力するよう要請した。欧州委は、ワクチン接種者の健康上のフォローアップを行うために有益な手段としてこれを位置付けたが、移動制限の解除の条件とする可能性を含めて、証明書をどのように利用するかは政治的な決定となり、法律的な問題の検討も必要だとして、慎重な姿勢を示している。