2020年12月15日 編集後記

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スパイ小説の巨匠と言われたジョン・ル・カレが亡くなった。スパイ小説というジャンルをある種の完成に導いたと同時に、その枠を大きく凌駕した、味わい深い人間喜劇(バルザックの意味で)を書いた作家だった。メインストリームの小説家ではない。しかし、小説の歴史を振り返って見ると、メアリー・シェリー(『フランケンシュタイン』)、ブラム・ストーカー(『吸血鬼ドラキュラ』)、コナン・ドイル(「シャーロック・ホームズ」シリーズや『失われた世界』)、モーリス・ルブラン(「アルセーヌ・ルパン」シリー ズ)、H.G.ウェルズ(『タイム・マシン』、『モロー博士の島』、『透明人間』、『宇宙戦争』など)、ジュール・ベルヌ(『地底旅 行』、『海底二万里』、『八十日間世界一周』、『二年間の休暇』など)のような、いわゆる大衆小説家、今風にいえばエンタメ小説家のほうが長く多くの人々に読みつがれ、映画やドラマや漫画なども通じて、現代の新たな神話を創造し、我々の想像力を掻き立ててきたのではないだろうか。イアン・フレミングの「007(ジェームズ・ボンド)」シリーズと並んで、「ジョージ・スマイリー」シリーズもそのような優れたエンタメ小説の系譜を継いで、20世紀の代表的な神話としての地位を確保するに違いない。