欧州中銀(ECB)の統計によると、商店における決済に占める現金の割合は、2019年にユーロ圏全体で73%となった。カード決済が24%、その他が3%だった。2016年には現金が79%、カードが19%となっており、現金決済が低下傾向にあることがわかる。
フランスの場合、現金決済の割合は59%と、ユーロ圏全体と比べて低い。カードが35%、その他が6%で、2016年(現金68%、カード27%)と比べて、現金の後退の勢いは大きい。フランス中銀の調査では、カード決済のうち39%が非接触方式となっている。フランスの場合、1件当たりの決済額が平均で12.3ユーロと、ユーロ圏全体の17ユーロと比べて少なく、このことが非接触方式が普及する背景にある。なお、現金所持額の平均は45ユーロで、これもユーロ圏全体の76ユーロと比べて少ない。これらはすべて2019年の数字だが、新型コロナウイルス危機を経て、非接触型決済を優先する傾向は一段と強まっている。最近の調査では、仏国民の5割近くが「現金より非接触型決済を利用する」と回答。この割合はユーロ圏全体の40%よりも高い。2020年にはカードが現金を追い抜いたものと予想されている。
その一方で、現金通貨供給量は逆説的に大きく伸びている。10月末のユーロの現金通貨供給量は1兆4240億ユーロとなり、1年前から10.6%の大幅増を記録。通常の増加率(5-6%)を大きく上回る伸びを示している。これは、家計が先行き懸念から現金通貨の退蔵を増やしていることにより説明されるという。