政府は、各種生活保障手当の財源を国が負担する実験的な制度を、パリ北郊セーヌサンドニ県で導入する方針を固めた。2022年年頭に導入される見通しという。
RSAをはじめとする各種の生活保障手当の運営権は各県に属する。これは地方分権の取り組みの一つとして導入されたもので、2004年以来、各種生活保障手当の財源のうち、国が補填している分は、80%から51%に引き下げられた。しかし、所得水準が本土において最も低いセーヌサンドニ県では、県に十分な収入がないまま生活保障手当の支給額は増大を続けており、この傾向は足元の新型コロナウイルス危機で一段と鮮明になった。政府は、セーヌサンドニ県側の要望に応える形で、生活保障手当の「再国有化」を試験的に行うことを決めた。
セーヌサンドニ県によると、RSAだけで2019年に県の負担額は2億700万ユーロに上った。RSAの受給者数は2020年末時点で9万人に上る見込みで、3月時点から5000人増加。2020年通年の追加費用は3000万ユーロに上る。「再国有化」の詳細はこれから詰めることになるが、この種の措置は、本土ではこれが初めてだが、海外県ではこの数年間で導入が広がっている。セーヌサンドニ県の事例が特例措置として残るのか、それとも全国で一般化される前兆であるのかは、今後の推移を見極める必要がある。