ケバブにする、それともグレック?

大衆的なファーストフードとして人気の「ケバブ」サンドウィッチには、フランス国内で呼称に地域差がある。近刊の「地方のフランス語大辞典」(ロベール社刊)がその分布や由来などについて分析している。
食べ物の呼称には地域差があるものが多く、例えば「チョコレートパン」は、南西地方では「ショコラティン」と呼ばれている(標準語では「パンオショコラ」)。ケバブ・サンドウィッチの場合は、パリ首都圏で「ギリシャの」という意味の「グレック」と呼ばれており、残りの地域ではほとんどが「ケバブ」、東部のアルザス及びモゼル地方では「デナー」と呼ばれている。
ケバブ・サンドウィッチは、串刺しにした肉を回転させながら焼き、それを薄切りにして、少量の野菜と共にパンに挟む形で供される。ポテトフライを伴うのが一般的である。串焼きの焼肉がケバブと呼ばれ、これは15世紀にオスマントルコ帝国において誕生したと考えられているが、これをサンドウィッチの形で供したのは、ドイツのベルリンで1970年代にトルコ系移民が始めたのが最初であるという。ドイツでは、「回転」を意味するトルコ語に由来する「デナー」を冠して「デナー・ケバブ」と称され、この名称がドイツと国境を接するアルザス地方などでは主流となっている。フランスにドイツからこの食べ物が移入されたのは1980年代で、当初はパリのカルティエラタンに軒を並べるギリシャ料理屋が始めた。当時は「ジロス」(ギリシャ語で「回転」の意)などと呼ばれていたが、ギリシャ料理屋が供するサンドウィッチのという意味合いから、「ギリシャの」という意味の形容詞「グレック」を冠するようになった。1990年代にこれがパリ首都圏に広がった時に「グレック」の呼称が一般化し、「グレック」と言えばケバブ・サンドウィッチを指すようになった。「アルジェリア風グレック」、「チュニジア風グレック」といった派生形も見られるようになっている。
これに対して、それ以外の国土の全域では「ケバブ」という本来的な呼び名が広く定着した。ただし、近年では、25才未満の若い層において、「ケバブ」ではなく「グレック」と呼ぶ人が増える傾向にあるといい、将来的には「グレック」が全国的に主流になる可能性があるという。