教員刺殺のテロ事件:追悼式典が挙行に、容疑者7人に予審開始通告

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中学校の教員がイスラム過激派の青年に刺殺されたテロ事件で、被害者のサミュエル・パティさんの追悼式典が10月21日夜、パリのソルボンヌ大学構内で行われた。国葬級の待遇となった。
式典前に、パティさんには、レジオンドヌール勲章などが特別に授与された。マクロン大統領の弔辞はテレビ中継の対象となった。大統領はこの中で、パティさんの教育に捧げた生涯を振り返りつつ、共和国の礎である教育の尊い使命を代表し、それに殉じたパティさんを称え、その精神を受け継ぐべく全力を尽くすと決意を述べた。
事件の捜査では、10月21日に7人に予審開始が通告された。テロ共犯及びテロ協力の容疑を問われる。予審は、担当の予審判事が起訴の是非を決めるために行う裁判上の手続き。容疑者のうち5人は勾留継続が決定、未成年者の2人は当局の監視下に置いた上で保釈された。
この事件では、教員が授業中にムハンマドの戯画を生徒たちに見せたことに抗議して、生徒の父兄がインターネット上で教員バッシングのキャンペーンを展開。これに触発される形で、犯人のアブドゥラフ・アンゾロフ(18)が犯行に及んだ。捜査当局は、キャンペーンを行ったブライム・C容疑者と、それに協力したイスラム過激派の活動家であるセフリウイ容疑者の両人に予審開始を通告した。アンゾロフはノルマンディ地方のエブルー市に居住、居住場所は犯行現場から80km離れているが、犯行当日に自動車で現場付近まで犯人を送り届けた友人1名、さらに、犯人が、犯行に用いた凶器の刃物をルーアン市内で購入した際に同伴した友人1名、そして、やはり犯人の友人で、イスラム過激化に影響を及ぼした疑いがある人物1名の合計3人にも予審開始が通告された。犯人は、被害者のサミュエル・パティさんの名前と勤務先は知っていたが、顔は知らなかったため、勤務先の中学校前で、同校の生徒の協力を得て被害者を同定し、尾行して犯行に及んだ。この際に犯人に協力した男子中学生の2人が、テロ協力の容疑で予審開始通告を受けた。調べによると、2人は犯人と共に3時間ほどの間、校門前で待機し、パティさんが現れたところでそれが本人であることを教えた。2人は犯人から300ユーロの謝礼を受け取った。犯人は、パティさんに話があると言って生徒たちの協力を得たといい、生徒たちは殺害の意図があるとは知らなかった、と供述しているという。
捜査の過程で、犯人の両親と祖父、弟の4人も逮捕されたが、21日までに釈放され、予審の対象とはならなかった。犯人の家族はチェチェン出身で、犯人が6才の時にフランスに亡命した。両親らは取り調べに対して、息子が1年ほど前からイスラム過激化の傾向を強めていたと証言。母親は、シリアに渡航するつもりなのではないかと疑っていたと証言している。犯人の行動は数ヵ月間で顕著に過激化していたといい、SNSのアカウント上に聖戦派の写真を掲載した件などが、インターネットユーザーにより当局に通報されてもいたが、当局は監視対象には指定していなかった。他方、ブライム・C容疑者と犯人の間には、電話の通話が1回、SMSのやり取りが数回あったことが判明しているが、容疑者は、犯人に殺害意図があるとは知らなかったと供述し、自身の犯行への関与を否定しているという。