パリ郊外で教員刺殺事件、イスラム過激派によるテロ事件

パリ西郊エラニー市(イブリーヌ県)で16日に、中学校の教員が学校付近で刺殺される事件が発生した。犯人は現場付近で警官隊により射殺された。イスラム過激主義を背景とした犯行であることが判明しており、国民に強い衝撃を与えている。
殺害されたのは、コンフランサントノリーヌ市の中学校に地理・歴史科の教員として勤めていたサミュエル・パティさん(47)。犯人は同日夕方、同行の校門前で、生徒たちから誰がパティさんであるのか聞き出した上で、パティさんの後を追い、エラニー市内で殺害した。犯人はパティさんの首を切断して逃走した。警察は現場から200メートルほど離れた場所で、刃物を持った犯人を発見。警察官らは武器を置くよう命じたが、犯人は拳銃型の武器を離さず、「アラー・アクバル」と叫び、警察官らにより射殺された。爆発物を身にまとっている可能性があったため、爆発物処理班が出て作業を行ったが、爆発物は所持していなかった。
犯人のアブドゥラフ・アンゾロフは、ロシア・モスクワ生まれでチェチェン出身の18才の男性だった。有罪判決を受けた過去はなく、イスラム過激化による監視対象者のリストにも入っていなかった。パティさんはこれより前、10月初頭の時点で、「表現の自由」に関する授業を行い、その際にイスラム教預言者ムハンマドの戯画を生徒らに見せた。事前にイスラム教の生徒には、戯画を見ないようにしてもよいと指示したというが、そのいきさつを巡り、一部の生徒の父兄らがパティさんの指導方針を問題視し、辞任を求める動きが持ち上がっていた。犯人はパティさんと直接の面識はなかった模様で、インターネット上でパティさんを糾弾するメッセージを見て、自ら犯行を思い立った可能性が高い。犯人は、首を切断された遺体の画像をインターネット上に投稿し、犯行の動機を記したコメントを残していたという。
警察は、事件の背後関係を調べるため、19日時点で11人を勾留し、取り調べを行っている。犯人の両親と祖父、そして弟(未成年者)1人の合計4人、そして、犯人と交流があった3人(うち2人は16日の時点で自ら出頭)、さらに、パティさんの生徒の父兄のうち、パティさんの辞任を要求していた2人と、これら父兄に協力していたイスラム活動家のアブデルハキム・セフリウイ氏とその配偶者が勾留されている。校内の事件では、最初に騒ぎ立てた女子生徒の父親ブライム・C氏が、インターネット上で学校名とパティさんの氏名を公表して辞任要求と抗議行動の呼びかけを行い(問題の女子生徒は当日の授業には出席していなかったことが判明している)、セフリウイ氏はブライム・C氏と共に学校を訪れて苦情を言い、自らもネット上でこの問題を取り上げ、大衆運動を呼びかけるなどしていた。なお、同氏はイスラム過激派として当局の監視対象になっている。こうしたネット上の動きが犯人を触発したものと考えられる。
マクロン大統領は16日夜に現地を急遽訪問し、「表現の自由と信教の自由、信仰を持たない自由を生徒たちに教えたがゆえに、我々の市民の一人が殺害された」と言明。教育と教員を守るために全力を尽くすことを約束した。大統領は国民に対して一丸となるよう呼びかけたが、政界の中にはこの機に乗じてマクロン政権のイスラム過激派への対応が手ぬるいと批判する動きもあり、政府は有効な対策を打ち出す必要に迫られている。