2020年9月22日 編集後記

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ふと気づくと、ロックダウン中にスポーツ紙を読む習慣をすっかりなくしてしまっていた。当初こそ、ほぼ全ての大会 やイベントが中止になった中で、毎日なんらかの話題を探してくる記者の苦労には感心もし、同情もしたが、新しいこ と(=ニュース)が何も起きない状況でいくらそれぞれのスポーツに関するとっておきの逸話を紹介され、蓄積された 知識を披露されても、興味は持続しない。バックナンバーばかり読まされているような印象を受けて、いつの間にか読 むのをやめてしまっていた。今夏から無観客の形でサッカーやテニスの大会が再開したし、自転車のツールドフランス のTV中継は高視聴率だと聞くから、ようやく活気が戻り始めたようだが、無観客試合には冷めたピザ、気が抜けたビー ル、夫婦のセックス(不適切なたとえ?)のような味気なさがあることは否めない。全仏テニスでは一定数の観客を入 れるそうなので、多少はスポーツ独特の興奮が回復することを期待したい。
美術館もさすがに無観客、とはいかないが、見学者を限定し、予約制で展覧会を再開している。先日、パリ・オランジ ュリー美術館でジョルジョ・デ・キリコ展を見たが、米英などの外国の美術館所蔵作品や個人所蔵の作品もたくさん展 示された良い展覧会だった。押し合いへし合いせずにすむ美術館で、人影がほとんどないデ・キリコの独特の風景画を ゆったりと眺めていると、ロックダウン中のパリの光景を重ねてしまうせいか、本来なら非現実的なはずの風景に不気 味な既視感を覚えざるをえなかった。無観客試合に臨むプレイヤーも毎回、このような奇妙な感覚を覚えているのかも 知れない。