パリ市は、「都市計画地域プラン(PLU)」と呼ばれる文書の改定作業を開始する。市民から広く意見を聴取した上で、気候変動対策を取り込んだ形で抜本的な修正を図る。
先の市議会選で再選を決めたイダルゴ市長(社会党)は、環境派の協力を得たことで選挙に圧勝した。環境政策の強化を打ち出しており、PLUの改定はその柱の一つとなる。PLUは、建築許可を発行する上で準拠される重要文書で、最後の大幅改定は2006年に遡る。当時は、住宅難の対策のために、低家賃住宅等の建設を進めることが課題だったが、今回の改定では、気候変動に対する耐性を高める街づくりが最大の課題となる。具体的には、パリ市が2018年に採択した目標(新規建築は低炭素を旨とする、2050年までに二酸化炭素の排出実質ゼロを達成する、など)を反映したPLUの策定が目的となる。パリ市では、新規建築と同じ面積だけ、緑地を整備することを義務付けるとの方針を示しているが、面積が限られているパリ市だけに、その実現には困難が伴うことが予想される。屋上スペースの緑地化によるオフセットは認めず、必ず地表レベルでの緑地化を求める方針とされ、ハードルはかなり高い。また、パリでよく見られる中庭緑地の保全や公共スペース化も課題として設定された。2024年のパリ五輪前の改定終了を目標とするが、新築よりも改修を優先する、リサイクル・リユース建材を優先する、といった一部の措置については、早期の導入を目指して、年内にも拘束力のある一連の措置が制定される可能性があるという。