欧州連合(EU)の27ヶ国は17日(金)から21日(火)まで延々と5日間に及んだ首脳会議(欧州議会)の末に、7500億ユ ーロという大型の復興プランに関して合意した。会議は、新型コロナで打撃を受けた国々への支援形態をめぐって揉め続け、返済が不要な補助金の規模を当初の構想の5000億ユーロから3900億ユーロへと引き下げることで辛うじて妥協が成立した。財政規律を遵守してきた「倹約4ヶ国(frugal four)」(「ケチな4ヶ国」ともいわれるが)とフィンランド が、放漫財政の目立つイタリアやスペインに対して補助金による寛大な支援を与えることに抵抗し、復興プランを共同提案した独仏と対立した。特にオランダのルッテ首相はマクロン仏大統領、メルケル独首相、コンテ伊首相などと丁々発止とわたりあい、次々と交換条件を要求して粘り続け、手強いヴィラン役を演じたが、欧州統合の命運がかかる復興プランを一人で潰すところまではさすがに行かなかった。この復興プランは規模の大きさもさることながら、EUが初めて債務の共同化に向けて前進するという歴史的な意味合いがあり、しかもそれを従来は債務共同化をタブー視してきたドイツが積極的に後押ししたという点でも画期的だ。合意が不成立に終われば、ユーロ圏とEUの存在意義自体が揺らぐところだった。
それにしても、EUの意思決定プロセスは効率が悪い。域内の最大の大国である独仏が共同で提唱し、同じく大国であるイタリアやスペインが待ち望む復興プランに抵抗した5ヶ国は、EUの人口の1割を占めるに過ぎない。居並ぶ大国が冷や汗や脂汗を垂らしながら小国をひたすら拝み倒してようやく承諾をもらう光景はほとんど滑稽ですらある。これと対照的な中国の意思決定システムが一部で持て囃されたのも無理はない。しかし、中国の香港やウイグルでの振る舞いを見てしまった今、意見の異なる少数派を力で押しつぶすことしか考えない「中国モデル」を羨ましいと思う人は少ないだろう。欧州モデルは面倒で焦れったいし、共産主義者の頭では一生理解できないだろうが、これが民主主義ということだろう。