ナント市内にあるサンピエール・サンポール大聖堂で18日午前に火災が発生した。消防隊が出動し、火災は数十分後に鎮火した。警察は同日、放火の可能性を含めて捜査を開始した。
火災は通行人が発見し、7時45分に消防に通報がなされた。火災は、正面扉の上方にあるオルガンの周辺と、聖堂の中央に位置する祭壇の両脇の合計3ヵ所から発生。オルガンの被害が最も大きく、一時は大きな炎と煙が上がった。いずれも配電盤のある場所から出火したといい、電気設備の欠陥に由来する可能性も指摘されているが、同時に発生している点が不自然であり、警察は放火の可能性も念頭に置いて捜査を進めている。火災の発生時には大聖堂は閉まっており、参拝客はなく、すべての門扉は閉まっていた。
サンピエール・サンポール大聖堂は15世紀に建立が開始されており、完成したのは1891年とかなり新しい。1972年に火災があり、屋根組みが全焼する大きな被害を受けた。屋根部分はコンクリートを用いて再建され、2013年に再建が完了したばかりだった。この大聖堂は、ブルターニュ王フランソワ2世の墓碑を収めていることで知られる。墓碑は、4体のアレゴリー像を中心に構成され、16世紀初頭に完成。フランスにおける初期ルネサンスの傑作だが、今回の火災で大きな被害はなかった模様。半面、この墓碑を作らせたアンヌ・ド・ブルターニュと同時代のステンドグラスは全焼したオルガンに近い場所に位置しており、火災により焼失した。
カステックス首相は同日午後、バシュロ文化相らを伴い現地を訪問。大聖堂の再建に全力を尽くすと約束した。なお、フランスでは、政教分離法が成立した20世紀初頭までに建立の教会は国の所有物として、国が建物を管理する責任を負っている。
警察は18日午後に、関係者のルワンダ人の男性を逮捕し、取り調べを行った。この人物は、17日夜に大聖堂の施錠を行い、鍵を管理していた。警察は1日間にわたり事情を聴取したが、19日午後に、容疑者認定等は行わないまま、同人を釈放した。