ダイムラー、スマートの仏工場を売却へ

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独自動車大手ダイムラーのフランス子会社スマート・フランスは3日、アンバック工場(モーゼル県)の従業員代表に対して、同工場を売却する計画を通知した。地元はこの発表に強い衝撃を受けている。
同工場は1997年の設立。「スマート」ブランドの小型車を製造し、現在は1600人が勤務している。ダイムラーは厳しい財政難に直面しており、昨年11月には、全世界で1万人に上る人員削減を柱とするコスト節減策(2022年までに年間14億ユーロの節減を達成)を発表していた。カレニウスCEOは数日前に、新型コロナウイルス禍の打撃により状況はさらに厳しくなったと言明しており、アンバック工場の売却は新たな状況への対応策の一つとして計画されたものとみられる。
同工場は、年間の生産台数が10万-15万台と、当初の目標を下回る状況が続いていた。2016年には、従業員との間で競争力向上のための労使協約が結ばれ、従業員側は、賃金据置きのままで週労働時間数を37時間から39時間に引き上げることを受け入れた。ダイムラー側は2018年に、5億ユーロを投資して、同工場の近代化を実現。EVの新モデルを同工場で製造する準備を整えていた。ダイムラーは2019年3月には、スマートをEVバージョンに特化し、2022年以降は製造を中国に移転すると発表。アンバック工場では、代わってメルセデスベンツ名義の小型EVを組み立てる方針を示していた。フランスで初めて、メルセデスベンツ名義のモデルが組み立てられるはずだった。
ダイムラーが、売却先にメルセデスベンツのモデルの組み立てを委託するのか否かを含めて、工場の将来がどうなるのかはまだ見えていない。ルメール仏経済相は、同工場が独仏の工業部門における協力の象徴であることを強調し、事態を注視する姿勢を示している。