フィリップ首相は7月2日夜、マクロン大統領に対して辞表を提出した。3日朝に発表された。大統領府は続いて、ジャン・カステックス氏を首相に指名すると発表した。フィリップ首相との引継ぎ式は3日中に行われた。組閣人事は6日に発表される予定。
カステックス新首相略歴
カステックス氏は1965年生まれの55才。首相に指名される前は外出制限の段階的な解除を指揮する特別代表の職務を果たしていた。マクロン大統領と同様にENA(国立行政学院)を卒業、保健分野を専門とする高級官僚の出身で、政治的には保守系の人材であり、サルコジ大統領の下で長官補佐(2011-12年)を務めたこともある。プラド市(ピレネー・オリアンタル県)の市長を務めており、市民の生活に密着した地方行政を重視するというマクロン大統領の新方針に即した人選でもある。
年金改革に意欲、警察に信頼の念
カステックス新首相は5日付の日曜紙JDDとのインタビューの中で、年金改革の遂行に取り組む意欲を確認したが、これには早くも労組から批判の声が上がっている。新首相はまた、5日にセーヌ・サンドニ県の警察を訪問し、警察組織への信頼の念を表明。同県の警察部隊の不祥事が最近に明るみに出たばかりだが、新首相はあえて同県の警察を訪問し、治安対策を重視する姿勢を示した。
フィリップ前首相の今後は
他方、辞任したフィリップ前首相は、5日に開かれたルアーブル市議会において、市長に選出された。フィリップ首相はこのところ、世論調査でマクロン大統領を上回る支持率を記録しており、フィリップ首相を外して新首相を起用したことについては、フィリップ首相が前面に出すぎて使いにくくなったとか、逆にフィリップ氏が次期大統領選(2022年)を含めて、今後のステップアップを目指すために内閣を離れたとか、様々な見方が取り沙汰されている。いずれにせよ、政治家としての重みはなく、実務家であるカステックス新首相の起用により、マクロン大統領による陣頭指揮がやりやすい体制になるのは確かで、残り任期でマクロン大統領が本気を出す布石と考えられる。フィリップ前首相とマクロン大統領の間の今後の関係が気になるところだが、マクロン大統領が、次期大統領選におけるサポート役として、場合によっては自身のリリーフ役として、フィリップ氏に信頼を置いている証だとする評もある。
番頭役の官房長にルベル氏
カステックス首相の番頭役となる官房長には、マクロン大統領の信任が厚いニコラ・ルベル氏(54)が起用された。ルベル氏は左派系の人材で、オランド左派政権で2012年から2014年にかけて大統領府長官補佐を務めた(前任者は奇しくもカステックス氏)。2014年以来は健保公庫(CNAM)の局長を務めており、歴代の保健省の政策に大きな影響力を行使したという。ルベル氏の起用は、マクロン大統領の指導力が内閣により強く反映されることを示唆している。