2020年6月30日 編集後記

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フランスの市町村選挙では環境派が大きく躍進した。環境を破壊してはならない、環境を保護しよう、という主張自体に正面から反対 する人は少ないが、これは環境派の強みでも弱みでもあった。環境意識が高まるに連れて、どの政治勢力も環境への配慮を政策案に組 み入れるようになり、環境派は政治的に希釈されて、存在意義を失ってしまうのではないかと言われた。実際フランスの環境派は一時 は消滅しかけたような印象もあった。特に社会党政権が経済面でリベラルな方向性を打ち出し、右寄りに舵を切った際に、社会党と連 立していた環境派の指導部が政権からの離脱を決定し、これに反対する一部の有力者が政権内にとどまったことで、環境派内の不協和 が露呈し、離脱した側も残留した側も結局は影響力を失った感があった。
しかし左右の中道寄り勢力を糾合して登場したマクロン政権の出現が、従来の二大政党体制に終止符をうち、社会党は一挙に弱小政党 に転落、左派陣営内ですら影響力を失った。これに乗じて、左派陣営ではLFIに代表される攻撃的な左派ポピュリズムが台頭したが、 その一方で、より穏健かつ合理的な左派を吸収した環境派も勢いを回復した。マクロン政権を敵視し批判する環境派だが、同政権が従 来型の左派を押しつぶしてくれなかったら、環境派はあのまま立ち直れずに終わったのではないか。
フランスでは1960年代にいったん挫折した左翼運動の活動家が、その後の活動領域を人権擁護や環境保護に変更したという流れがあり、 エコロジーは左派との親和性が強い。そのせいで環境派の主張には、純粋な環境問題への配慮とは一見無関係な左翼イデオロギーや現 実性のない理想主義が混在していることも多く、これはエコロジーの推進にはむしろマイナスだろう。そもそも環境保護と人権保護は 必ずしも利害が一致しないことが多い。過激な主張はポピュリストに任せておいて、より地道な環境政策を実施すべきだろう。
現行世代の環境派の間では、先進国の大多数が新自由主義的な資本主義を基本モデルとしている中で、影響力を発揮するには経済成長 との両立を目指すプラグマティックなエコロジーを推進する必要があるという認識が浸透しつつあるように思われる(成長型社会から ゼロ成長またはマイナス成長社会への転換を目指すよりラディカルなエコロジーの考え方は現状では少数派)。それはそれで歓迎すべ きことだが、これは現政権が掲げる方針と同じだ。両者の違いは「信念の度合い」というだけでは、いささか心もとない。環境派が市 政を勝ち取った主要都市で今後にどのような具体的政策が導入されるかを注視したい。