ヴァレオのアシェンブロワCEO、新型コロナウイルス危機の影響を語る

投稿日: カテゴリー: 欧州自動車・モビリティ情報

仏自動車部品大手ヴァレオは6月25日に株主総会を開くが、これを控えてアシェンブロワCEOは新型コロナウイルス危機後の自動車市場の状況に関する見解を、仏ルモンド紙に対して語った。CEOによると、この危機を経て自動車の利用に対するイメージは改善した。ボストン・コンサルティング・グープが4月に実施した世界規模の調査では、ドライバーの8割が自家用車を最も安全な交通手段の一つと考えている。またフランスで5月にVirtuo(レンタカー)が実施した調査によると、今夏の長距離移動の手段として自動車を優先すると回答した人の割合は77%に達し、危機以前の54%から大きく上昇した。CEOによると特に、上の世代と比べて自動車離れの傾向があるとされていた若い世代で自動車の再評価が目立つという。
自動車生産の再開については、中国での回復が迅速で、CEOによると同国におけるヴァレオの5月の売上は前年同月を上回り、V字回復がみられる。米国およびメキシコでの生産再開は予想よりも遅い5月末からだったが、回復のペースは非常に速いという。ヴァレオの顧客(自動車メーカー)は需要に答えるために、危機対策の休業中の遅れを挽回すべく、ほぼ全ての工場において夏季休暇を取りやめて操業を続ける方針だという。外需への依存度が高い日本や韓国の自動車生産の回復は段階的であり、欧州での回復も緩やかだという。
CEOは危機の影響でメーカーがプロジェクトを先送りする傾向があり、一部の車種やモデルの将来性を再検討しているとした上で、長期的には強者はますます強く、弱者はますます弱くなると分析、この時期に製品に投資できるメーカーが有利になるとし、これは中国では明白だと指摘。大型の再編を進める仏ルノーは弱者かとの質問に対して、CEOは直接的な回答を避け、競合のPSAの経営再建の前例をあげつつ「弱者から強者へは素早く変身できる」とし、またルノーのデメオ次期CEOはルノーを再建できる人材であり不安はないとコメントした。
ヴァレオの経営状況について、CEOは現金資金を優先事項にあげ、23億ユーロのクレジットラインがあるが、年内に利用しない可能性が強く、公的保証付き融資も社会保障負担の支払い猶予も申請しなかったとしたうえで、フランスでもほかの欧州諸国でも一時帰休を活用して生産の現実に人員を適応させてきたと説明。
CEOは最後に、新型コロナウイルス危機は、危機以前にみられたディーゼル車の終わり、運転支援技術による安全要求の高まり、電動化などの傾向を加速し、ヴァレオの戦略的選択の正しさを証明したと主張。CEOは危機を通じて、中国でも欧州でも環境基準が引き下げられる事態は発生せず、独仏西などの自動車部門支援策もEVとハイブリッド車を優先的な対象としていると強調している。