マクロン大統領が14日のテレビ演説で制限解除の加速を予告したのを受けて、政府は15日に、個別の案件について一連の方針を示した。
まず、パリ首都圏で有効だった公共交通機関利用時の就労証明書の携行義務が16日付で解除された。それまでは、朝夕の混雑時間帯の利用が就労者のみに制限され、利用者は就労証明書を携行する義務があったが、これが廃止され、利用者制限が解除された。現在、パリ首都圏の公共交通機関の利用者数は平時の30%程度とまだ低い。パリ・メトロではまだ20駅程度の閉鎖が続いており、早期の再開が望まれている。
中学校までの学校については、22日(月)から全員登校の義務を回復する旨が予告された。これにあわせて、教育省は16日、安全衛生基準を緩和する方針を発表。現状では、1生徒につき4平方メートルの空間確保が義務付けられており、これだと1クラスあたり15人が限度で、全生徒を受け入れることはできないが、基準が「隣と1メートル」の間隔維持に改められる。この制約は屋内のみで適用される。教育の現場からは、これでも全生徒の受け入れは難しいとする声が上がっている。
マクロン大統領は、就労の本格化を通じて、「たくさん働いて」経済回復を後押しするとの方針を示したが、これに呼応して、労働省では、衛生当局や労使との協議を経て、数日以内に新たな安全衛生基準を提示すると予告した。経営者側はこのところ基準の緩和を求めて圧力をかけており、これに配慮した修正がなされる見通し。経営者側は、1人当たり4平方メートルの空間の確保や、洗浄の定期的な実施といった規定の緩和を望んでおり、業種ごとに細かく異なるガイドラインの統合による簡素化も求めている。これに関連して、ルメール経済相は15日、「テレワークは望ましいあり方ではあるが、特効薬ではない」と言明し、テレワークの恒常化を求める考えはないことを示唆した。また、一時帰休制度については、7月1日付で新たな制限を加える可能性を否定し、制度の次回の見直しは9月の休み明けとする考えを示唆した。