2020年6月9日 編集後記

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ローマのラファエロ展はもとより、遥かに規模の小さいパリのターナー展ですら、足を運ぶ気力がわかない。 コロナ対策のロックダウン期間中に欲求不満が溜まって、解除後に様々な催しに赴く人も多いのだろうが、 自宅待機がなんとなく常態になってしまって美術館はおろかカフェにすら行く気が失せてしまった人もけっ こういるのではないか。筆者などは、人が多い場所に行って感染リスクをおかすぐらいなら画集で我慢する、 という体たらくに陥りつつある。しかしこういう無気力派と対照的に、BLM運動のデモ参加者は元気がいい。 黒人への差別は米国の建国の歴史の一部をなしており、いってみれば同国のDNAに書き込まれている構造的 問題だから、一度や二度の抗議運動ぐらいで解決するとは思われないが、運動の趣旨自体にはもちろん好感 が持てる。ただし、コロナ感染がまだ収束していないこの状況でいささか無謀ではないか、との疑問はある。 周知のとおりコロナ禍は米国では特に黒人に手ひどい被害をもたらした。その事態は今回の運動の盛り上が りとも無縁ではないだろうが、デモでの密集により感染の再燃が起きれば、それで苦しむのはまた黒人とい う悪循環に陥りかねない。そういう点も考慮して、より戦略的な差別対策を進めることが今後の課題だろう。