パリ首都圏の公立病院を統括するAP-HPは27日、新型肺炎の重篤患者を対象に行った臨床試験で、トシリズマブにより病状が明確に改善する効果が得られたと発表した。具体的な結果は、査読を経て発表される研究論文にて公表される。
トシリズマブは商品名をアクテムラといい、欧州では中外製薬とロシュ(スイス)が共同子会社を通じて販売している。インターロイキン-6の作用を抑制するモノクローナル抗体で、関節リウマチの治療薬として皮下注射により用いられている。AP-HPが行った臨床試験は、129人の新型肺炎患者を対象に行われ、65人に皮下注射にてトシリズマブを投与、64人には投与せず、対照群とした。重篤な状態だが、集中治療室には入らず、気管チューブの装着は行っていない患者を対象に投与したところ、トシリズマブを投与した患者では、集中治療室入りや死亡に至る者の数が顕著に少なかったという。
トシリズマブの治療効果についてはこれまでにも有望な結果を示した試験があったが、対照群を設定した試験で成果が確認されたのは今回が初めてだという。