英国と欧州連合(EU)の離脱交渉、不調に

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英国の欧州連合(EU)離脱に関する両者の間の交渉ラウンドが24日にひとまず終了した。EUのバルニエ交渉官は同日、英国政府の態度に深い失望の念を表明した。
英国とEUは、2020年末日までは移行期間として離脱前の旧来の関係をほぼ維持している。両者は現在、離脱後の関係を定める協定の締結に向けた交渉を進めているが、両者の主張は平行線をたどっており、24日までの協議では前進は見られなかった。バルニエ交渉官は、離脱合意に盛り込まれた重要な問題で、英国側の交渉に対する態度が不十分だと述べて、強い失望の念を表明。具体的に、離脱後の平等な土台を実現するという項目(レベルプレイングフィールド)について、英国側が、EUの一部の規格(労働法令、税制、環境)を採用するのを拒否しているのを問題視し、平等な土台が確保されないなら、EU市場へのアクセスは認められないとの姿勢を確認した。このほか、欧州人権条約の加入と欧州司法裁判所の権限の承認を英国側が拒否していること、警察・刑事司法協力と人の自由な往来に関する明確な保障を英国型が与えていないこと、そして、漁業問題での進展がないこと、の合計4点を挙げた。交渉官は、12月末までに交渉を成立させるためには、6月末までにこれらの問題で実質的な前進を実現する必要があると言明。このままだと合意なき離脱に至ることは避けられないとの見方を示した。
英国政府側は、EU側が他の貿易相手には求めないような条件を求める限りは、前進は得られないと反論。漁業問題については、主権水域における権限を回復できるのでない限りは進展はないとした。
6月30日まで、双方には移行期間の延長を請求する権利があるが、このままだと延長には至りそうにない。EU側は、新型コロナウイルス感染症から回復したジョンソン首相が公務に復帰すれば、英国側が、コロナ危機に伴う経済への打撃を踏まえて、譲歩に応じる方向に軌道を修正するのではないかと期待している。ジョンソン首相は27日にも公務に復帰するものと報じられている。