ウイルス流出疑惑の渦中にある武漢ウイルス研究所、フランスの技術移転で発足

投稿日: カテゴリー: 日刊メディアダイジェスト欧州レポート

米国政府が新型コロナウイルスの起源に関する調査を開始したと発表したのに前後して、武漢ウイルス研究所を巡る疑惑がクローズアップされている。
英国のラーブ外相は、中国は「困難な問題」に回答しなければならないと言明。フランスのマクロン大統領も、インタビューの中で「我々が知らないことがあるようだ」とコメント。ドイツのメルケル首相も、4月20日になり、中国政府に対して、新型ウイルスの起源に関する情報開示を呼びかけた。欧州諸国の首脳は、明確な疑念の内容を表明するのを避けているが、疑念の中心にあるのが、いわゆるレベル4の研究施設(有効な治療法・予防法が確立されていない病原体を扱う)に分類される武漢ウイルス研究所で、人為的に開発されたウイルスだとする説を採用する専門家はほとんどないが、同研究所から誤ってウイルスが流出したという説が再浮上している。
武漢ウイルス研究所は、フランスの技術移転を経て2018年1月に開所した。研究所設立の構想は2004年に浮上。SARS(重症急性呼吸器症候群)禍を受けて、中国における対策に協力する必要があるとの判断から、当時のシラク政権が協力を承認したものだが、当時から、中国を信用すべきではないとする消極論が政府部内にはあったという。特に、レベル4施設を監督する国際的な枠組みがない現状で、中国の暴走を止めることはできなくなるという懸念が提起されていたという。そうした問題もあって、実現には長い時間がかかり、2018年1月にようやく開所したが、このほど、米ワシントンポスト紙が報じたところによると、米国大使館の館員が当時に同研究所を訪問し、安全措置が不十分だとする報告を米国政府に対して行っていたといい、これが今回の疑惑浮上の根拠の一つとなっている。中国の報道機関も、安全性の不備に関する報道を2月の時点で行っていた。