2019年11月19日 編集後記

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仏ルモンド紙が19日号から「老化」に関する特集を掲載し始めた。高齢化が進む欧州や日本などの社会的変化を6回にわ たり様々な観点から分析するという趣向のようだ。高齢化・少子化による労働力の低下をどう補うかは先進国に共通の 悩みだが、欧州や国際機関での支配的な考え方は移民を積極的に導入せよ、というもので、欧州のメディアでは移民受 け入れに消極的な日本に対して批判的な論調が多い。しかし、その一方で欧州諸国の多くが移民のもたらす宗教的・文 化的・教育的・倫理的な異質性による社会的調和の崩壊に危機感を強めており、イスラム主義の浸透に苦しんでいるの だから、ここには論理矛盾があるというべきだろう。移民は極めて優れたスポーツ選手をもたらすなどの明らかな利点 があるが(アフリカ移民系の素晴らしいプレイヤーたちがいなければフランスはサッカーW杯に2回も優勝できなかった だろう)、国民全体の能力向上には必ずしもつながらない。高度の技術や知識や意識を持つ移民のみを選択的に受け入 れるという方法もあるが、これは移民の出身国にとってマイナスにしかなるまい。勝手な言い草かも知れないが、内戦 や貧困のある国ほど、最も能力や教育のある人々が逃げ出さずに踏みとどまり、和平や変革に努力することこそが望ま しいのではないか(これは右派が大好きなご都合主義的言説と同じであることは認めざるを得ないが)。
移民よりもロボットにより労働力を補うという日本の選択は、世界的には少数派かも知れないが、成功すればオリジナ ルなソリューションとして世界に向けて自信をもって発信することも可能だろう。日本人が動物やロボットと取り持つ 関係の特殊性は欧州の識者も非常に注目しており、例えばフランスで動物行動学の知見を哲学に導入したドミニク・レ ステル教授などが以前から鋭く指摘しているところだ。日本人は伝統的に人間と非人間の間に知的・情緒的な垣根を作 らず、シームレスかつボーダーレスに接する能力が発達しているので、ロボットに恐怖感や不安を抱かずに接すること ができる。筆者自身も全身をブルカで覆った移民系女性には恐怖や敵意を感じるし、動物や植物やロボットのほうには るかに親しみ(人間味?)を感じる。もちろんロボットの普及にもリスクはあるし、AIのシンギュラリティに対する不 安がなくもないが、他方で鉄腕アトムがいよいよ現実になれば楽しい。最悪の場合でも、イスラム主義者よりもターミ ネーターに殺される方がはるかにましだと考えている。(I’ll be back next week, of course.)