スコットランドと北アイルランドで離脱反対派が勝利

英国で12月12日に実施された総選挙では、与党の保守党が勝利して欧州連合(EU)からの離脱が確実になったものの、地域別ではスコットランドと北アイルランドで離脱反対派の地域政党が勝利し、英国からの独立の気運が高まっている。
スコットランドでは同地域に割り当てられた59議席のうち48議席をスコットランド国民党(SNP)が獲得した。スタージョン党首(スコットランド自治政府の首相)は、ジョンソン首相は英国をEUから離脱させる権限を得たかも知れないが、スコットランドをEUから離脱させる権限を得たわけではないと主張、スコットランドには自らの未来を選択する権利があるとして独立の是非を問う住民投票の再実施を提唱した。住民投票の実施には英国議会の承認が必要であり、ジョンソン首相は以前から2014年の住民投票(55%が英国残留を支持)で独立問題は決着済みとの立場をとっているため、住民投票が実現する可能性は現状では薄い。ただし、2014年と違って英国のEU離脱という新たな要因が加わったことで、従来からEU離脱に反対しているスコットランドとイングランド・ウェールズの亀裂はいっそう広がった。スコットランドでは2021年に自治議会の選挙が予定され、スタージョン氏は自らの公約である住民投票の再実施に向けて英国の議会と政府への圧力を強めると考えられる。
北アイルランドでは同地域の英国への帰属維持を支持し、保守党に閣外協力してきたプロテスタント系の民主統一党(DUP)が改選前の10議席から8議席に後退した。DUPは保守党が過半数割れに陥っていた改選前の英国議会ではキャスティングボートを握っていたが、今回の選挙で保守党が単独過半数を獲得したことで、国政での影響力も失った。これに対して、北アイルランドとアイルランド共和国との統合を支持するカトリック系のアイルランド民族主義政党が合計で9議席を獲得して(シン・フェイン党は7議席で変わらず、社会民主労働党が2議席を獲得)、初めて多数派となった。スコットランドと同じく北アイルランドも2016年の国民投票ではEU残留を支持したうえに、ジョンソン首相がEUと結んだ離脱協定案では北アイルランドとアイルランド共和国の間で物理的国境が復活することを回避するために、北アイルランドと英国本土との間にEUと英国の実質的な国境を設置することが取り決められており、北アイルランドと英国本土の制度的距離は広がりつつある。