プルーストの未刊作品が刊行に

『失われた時を求めて』で20世紀の代表的な作家とみなされているマルセル・プルースト(1871-1922)に未刊の遺稿があったことが判明し、10月にエディション・ド・ファロワ出版から刊行される運びとなった。これはプルーストが若い頃に書いた短編小説8篇を集めたもので、すでに1971年に刊行済みの1篇と合わせて出版される。未刊原稿は、プルーストの初期作品『ジャン・サントゥイユ』や『サント=ブーヴに反論する』を刊行した研究者・出版者ベルナール・ド・ファロワ氏(1926-2018)が所有していたもので、同氏の遺言によりフランス国立図書館に寄贈されたプルースト関連の資料の中から見つかった。同氏はプルーストの初期作品に関する博士論文を準備していたが、1960年代にこれを放棄した。今回発見された遺稿は、それ以来、同氏の手元で眠ったままになっていた模様。
プルーストは『失われた時を求めて』を完成しないまま膨大な未定稿を残して死去したために、同作のかなりの部分は弟などが遺稿を整理する形で出版された。その後も研究者による草稿研究の成果を取り入れた新たなエディションが次々と刊行され、現在も異なる複数のエディションが併存している。大部の書簡集の出版も含めて、これほど研究が進んでいる作家なため、その存在すら知られていなかった未刊遺稿の発見は驚きを誘った。ド・ファロワ氏は自分の研究成果が大学人から不評だったことに不満を抱いていたため、遺稿を公表しなかったのではないかとみられているが、プルースト研究の第一人者であるジャンイブ・タディ氏は、研究者にとり垂涎の的であることが明らかな遺稿をド・ファロワ氏が秘匿していたことに苛立ちを隠していない。
ド・ファロワ氏が博士論文のためにすでに書き上げていた論考の一部が『プルースト以前のプルースト』という著作にまとめられて2019年に出版されたが、同氏の遺稿の整理・刊行作業がプルーストの遺稿の発見にもつながった。プルースト自身がこれらの小説をどのように執筆したのか、なぜ出版しなかったのかなどは新たな研究課題となりそうだ。