食料品等の付加価値税(VAT)撤廃は良案か

「黄色蛍光ベスト」の抗議行動を経て政府が開始した「国民協議」では、食料品等の必需品について付加価値税(VAT)の撤廃を求める声が上がっている。先に閣僚が共同司会となったテレビ討論の際にも、この案が一般の大きな支持を受けていた。購買力増強と社会的正義の実現という「黄色蛍光ベスト」の要求を代表する措置となっており、フィリップ首相も、可能な措置であるとコメントして検討を約束している。ただ、これが要求の趣旨に沿った良案であるとはおよそ言い難い。
付加価値税(VAT)の年間税収は1470億ユーロに上り、その内訳は、20%の標準税率が1200億ユーロ、10%の中間税率(外食、宿泊等)が150億ユーロ、5.5%の優遇税率(食料品・生活必需品)は110億ユーロ、2.1%の超優遇税率(医薬品、新聞雑誌)が5億2500万ユーロとなっている。5.5%の優遇税率をゼロにした場合、単純計算で110億ユーロの減税ということになるが、それが消費者に還元されるとは限らない。外食産業が中間税率の適用対象になった際がその好例で、この時は減税のかなりの部分を、価格に転嫁をしないという形で業者が吸い取った。また、たとえ全額が消費者に還元されたとしても、5.5%の減税は額としてさほど大きくはならず、実感が得られないほとの金額となる。低所得者層は購入額そのものが小さいから、減税規模はなおさら小さい。逆に、富裕層はたくさん食べ、また高価な食料品を食べるわけであるから、付加価値税による納税額は低所得層よりはるかに大きい。付加価値税の廃止は、低所得層よりも、富裕層にとって有利なプレゼントとなる所以である。廃止するよりは、その分の税収を所得再分配の措置に投入する方がよくないだろうか。「民衆」が発案して支持する「名案」なるものは、およそ本人たちのためにならない場合が多いということを示す好例ではないだろうか。