マクロン大統領の警護担当者ベナラ氏、勾留の上で取り調べ受ける

マクロン大統領の警護担当者がデモ隊に暴力を振るった事件で、本人のアレクサンドル・ベナラ氏をはじめとする5人が20日に警察により勾留された。大統領府は同日、ベナラ氏の解雇の手続きを開始したと発表した。
ベナラ氏は去る5月1日のメーデーの際に、警察に同行して市内で高校生団体等が主催した抗議行動の現場に行き、抗議行動に加わっていた男性などに暴力を振るっていた。ベナラ氏は警察の腕章をつけ、機動隊のヘルメットをかぶり事に及んでおり、警察は21日、ベナラ氏を暴力行為、警官身分の詐称、そして、警察の動画の違法取得の容疑で勾留し、取り調べを開始した。ベナラ氏のほか、ベナラ氏に同行して現場にいたバンサン・クラーズ氏(マクロン大統領のLREM党の職員)が勾留された。また、ベナラ氏の求めに応じて、数日前に事件当時の警察の街頭監視カメラの映像を同氏に提供した疑いで、パリ警視庁の責任者ら3人が勾留された。この動画違法取得の件は事件報道がなされた後に明らかになったもので、大統領府はこれを口実としてベナラ氏の解雇を決め、同日に発表した。
ベナラ氏は26才。憲兵隊の予備役として訓練を受けた以外は警備関連の資格を有していないが、2012年には大統領選キャンペーンでオランド候補の警備に加わるなどして人脈を広げた。オランド政権の発足後にはモントブール氏(当時、経済相など閣僚を歴任)の警護担当者となったが、乱暴な運転の末に事故を起こし、そのまま逃げようとするという失態を犯し、解雇されたという。経歴には不明な点も多いが、ベナラ氏はその後、マクロン大統領が大統領選への出馬を決める以前からマクロン氏の警護担当者に就任し、そのままマクロン大統領は大統領府のスタッフとしてベナラ氏を迎え入れた。役職名は官房主任付の警護責任者となっており、報道によれば月額1万ユーロの報酬が支給され、ブランリー河岸にある大統領府別館内に住居も与えられていた。ベナラ氏にはまた、国会議事堂の議場内に入る通行証も与えられていたことが分かっており、警察の活動を「見学」に訪れて警官のごとくふるまっていたという事件に留まらず、常軌を逸した厚遇と権限を得ていたことが明らかになっている。
ベナラ氏の暴力事件が報道により明らかになった19日時点で、大統領府は、ベナラ氏が5月上旬に2週間の停職処分を受け、その後は大統領警護の役割を解かれ、別の職務に就いたと発表していたが、実際には7月14日の革命記念日の式典警護など各所に姿を見せていたことも判明しており、発表された処遇が実際には徹底していなかった疑いも浮上している。もともと粗暴で支配欲の強い人物が、大統領の庇護を得て自尊心をさらに肥大化させ、周囲が行き過ぎを止められない空気になっていたようにも思われ、大統領の実際の対応がどうだったのかなど、疑問は尽きないが、大統領はこの件で一切、発言を控えている。
国会の野党勢力は一連の発表を受けてマクロン大統領を厳しく批判。折しも下院で行われていた憲法改正法案の審議は空転し、20日には特別調査委を上下院に設置することで与野党はひとまず合意した。23日にはコロン内相の証人喚問が行われることになっている。