仏当局、死刑問題をめぐるジレンマに直面

「イスラム国」に合流していたフランス人がシリアやイラクで勾留されているが、1月18日に類似の状況にあったドイツ人女性が1月18日にイラクで死刑に処されたことで、死刑の廃止呼びかけを外交上の重要課題に掲げてきた仏当局はジレンマに直面している。
仏ルモンド紙によると、シリアのクルド人勢力はフランス人20家族(成人が40人前後、子どもが60人前後)を勾留している模様だが、クルド人勢力は死刑を適用していない。これに対して、イラクでは5家族が勾留されており、成人は死刑判決を受ける可能性がある。このうち、2人のフランス人女性(27歳と28歳)を擁護する弁護士が1月23日にマクロン大統領に当てた書簡で、イラクの司法手続きの公正さに疑念を表明しつつ、両女性に死刑判決がくだされた場合には、処刑を阻止すべく介入するよう仏当局に要請した。
仏テロ担当検事のモランス氏は1月23日、イラクやシリアで勾留されているフランス人は全員が仏当局の逮捕状や捜索状の対象となっていたので、仏司法当局が国内で裁く権利があると同時に、これらのフランス人は武力紛争に関与して逮捕されたのであり、被害を被った国にも裁く権利があると説明した。
仏政府はイラク政府との間に司法協力関係を結んでいないので、イラクで勾留されているフランス人の保護は領事当局の管轄となる。仏法務省では、イラクで勾留されているフランス人に現地の司法手続きが適用されるべきかどうかを決定することはイラクの主権に属するが、同時に、外国で勾留されている全てのフランス人には仏領事当局による保護を受ける権利があり、外交ルートを通じた働きかけが行われているとしている。
マクロン大統領は昨年11月に、欧州人権裁判所で演説した際に、死刑廃止に向けた闘いを「文明の闘い」だと形容したが、仏外務省筋では、フランスの価値を擁護する必要があるものの、テロの犠牲になった主権国(イラク)にフランスの価値を押し付けることはできず、複雑な問題だとしている。