「ユーロ圏離脱」の危険過ぎる賭け

大統領選で、極右FNのマリーヌ・ルペン党首は、ユーロ圏離脱の可能性を選挙公約に明確に盛り込んでいる。同様の主張は、左翼党所属のメランション候補にも共通している。いずれも、フランスが抱える問題点の源泉を欧州連合(EU)と見定めて、ユーロ圏からの離脱により自由を取り戻せばフランスは繁栄の道を進めるという主張であり、グローバル化の負け組となった層の国民の間で、この種の主張は一定の説得力を持つようになっている。
ユーロ圏の機能のあり方に問題があるのは確かとしても、ユーロ圏離脱はその問題を解決する以上に、はるかに大きな問題を生じさせることになる。まず、ユーロ圏からの離脱の方針が明確に示されれば、足元で資本の流出が加速し、資本市場が混乱するのは間違いない。ユーロに代わってフランが再導入されれば、通貨価値が10-30%ほど下がり、これが輸入インフレの亢進を招くのは不可避となる。家計の購買力はその分削がれることになり、庶民が大きな犠牲を迫られることになる。メランション候補などは、法定最低賃金(SMIC)を大幅に引き上げて、家計の購買力を支えると説明しているが、通貨安による原材料費の高騰に加えて人件費の増加に見舞われる中小企業が人員削減を迫られるのは必至で、失業増を招く恐れが濃厚である。中期的には通貨安による輸出競争力の向上を見込めるのは確かだが、フランスのユーロ圏離脱を経てユーロ圏が瓦解し、他の諸国も自国通貨に戻るということになれば、通貨安競争が発生して共倒れになりかねない。また、残存国債がユーロ建てからフラン建てに切り替わるようなら、通貨安で額面が目減りすることをデフォルトとみなす投資家らの訴えが集中するのは避けがたく、そもそも、信用低下で調達金利が大幅に上昇し、国に大幅な費用が生じることになる。仏中銀はその費用を年間300億ユーロとする数字を示している。FNなどは、中銀の国債引き受けにより問題なく乗り切れると主張しているが、貨幣増刷がインフレを招くことは数々の前例が証明済みで、よほど楽観的でなければ、あるいはよほど捨て鉢になっていなければ、そのような賭けに出る者はないだろう。