「幸福な職場」の落とし穴

このところ、「職場での幸福」を唱道する企業が増えている。幸福を感じて働く従業員は生産性も高く、豊かな発想力も伸びるなどとして、ベンチャー企業から大企業に至るまで多くの企業が、専門の責任者を置いて、幸福を演出する取り組みを進めている。ヨガ教室を主催するとか、職場の壁をロッククライミングの練習用壁面にするとか、その種の「楽しい職場環境作り」が代表的だが、こうした取り組みが逆効果になる可能性を指摘する向きもある。事実、「楽しい職場」アピールは、全員に参加と共有を求めることを意味し、仕事だけでなく、「共に楽しい時間を過ごす」ことまで強要され、断りにくい空気を作り上げることになる。管理職労組CFE-CGCで幹部を務める労働医のマルティーヌ・ケリエ氏は、そうしたポリシーに共感し、仕事と幸福の追求に全力をあげて取り組むような真面目な人ほど、何かの拍子で心が折れると脆く、燃え尽きてしまうと指摘する。仕事が楽しくなくても当たり前だし、嫌だっていいはずなのだが、それを表には出しにくい無言の圧力が、「楽しくなければ駄目だ」という本末転倒な規範意識としてじわじわと迫ってきて、なじめない人々を圧迫するという構図が出現するわけである。労働マネジメントの専門家ダニエル・コサール氏は、「楽しさ」の強要は、問題が生じたときにそれを言い出しにくくする空気を作るという点で、仕事にも幸福にも支障を招くと指摘。職場が楽しいとしたら、それは仕事が楽しいからであって、仕事を楽しくするには、マネジメントのあり方を変えて、従業員の意見に耳を傾けることができるような人間関係を構築するのが第一であろう。みんなでヨガをやれば仲間になれると思ったら大間違いである。